
重要文化財にも指定されている都立公園
東京都内には歴史的に価値のある建築物が数多く残されており、当時の建築技術や繊細なデザインが今もなお残されている建物もあります。経年の劣化により、館内に入れない建築物も増えており、歴史を感じられる空間を体感できるのは貴重な機会です。そこで今回は国の重要文化財にも指定されている都立公園の「旧岩崎邸庭園」をご紹介します。

東京メトロ千代田線湯島駅1番出口から徒歩3分にあるのが「旧岩崎邸庭園」です。東京メトロ銀座線上野広小路駅や都営地下鉄大江戸線上野御徒町駅から徒歩10分、JR御徒町駅から徒歩15分ほどの距離にあります。上野駅前の不忍池からもほど近く、上野恩賜公園散策のついでに少し足を延ばしてみるのもおすすめです。

旧岩崎邸庭園は1896年に、岩崎彌太郎の長男で三菱第3代社長の久彌の本邸として建てられた建物です。当時は20棟もの建物が並んでいましたが、現在は洋館・撞球室・和館大広間の3棟のみが残っています。1952年に国有財産となり、1999年に重要文化財に指定、現在では重要文化財を体験できる都立公園です。
黒漆喰で仕上げた煉瓦塀

旧岩崎邸庭園の煉瓦塀は当時、煉瓦積みされた壁を黒漆喰で仕上げていました。当時は桟瓦が葺かれており、耐震補強工事の際に発掘された瓦を使用して、当初の様子が一部復元されています。
岩崎家の本邸として竣工した洋館

1896年に三菱を創業した岩崎家の本邸として竣工した洋館です。設計は英国人建築家のジョサイア・コンドルが手がけており、当時では珍しい木造2階建ての建築で建てられました。

イギリス・ルネサンス様式を基調としており、イギリスのルネサンス建築第二期に当たるジャコビアン様式やアメリカ・ペンシルバニアのカントリーハウスのイメージも取り入れられています。南側の庭園に面した2層のベランダと列柱が目を惹く外観です。

洋館の館内は靴を脱いで、館内を回ることができます。洋館の1階部分と2階部分に加えて、1階部分と繋がっている和館まで観覧できる広々とした空間です。

館内各所には暖炉が設置されており、レイアウトに合ったデザインが目を惹きます。当時のものがそのまま残っているので、生活ぶりも感じられる雰囲気でした。

こちらはホールと大階段です。柱や窓などディテールにこだわった繊細なデザインが歴史を感じさせます。
鹿鳴館時代を彷彿させる手の込んだデザインの暖炉

ホールには暖炉が置かれており、鹿鳴館時代を彷彿させる手の込んだデザインが見られます。大理石造りの暖炉には緻密なデザインが施されたタイルが貼られていました。

観覧はできませんが地下通路もあり、隣に併設された撞球室へ繋がっています。非公開エリアですが、中の写真などが展示されており、現在で考えても精巧な造りや豪華さが感じられる空間でした。

各部屋には窓が複数付いており、レトロな壁や天井の壁紙。窓枠やカーテンレールの細かな意匠に驚かされます。明治から続くしっかりとした緻密な建築技術や、普遍的なデザイン性の高さを肌で感じられました。
実際に使われていたバカラのガラス食器

部屋の一部には実際に使われていたものも展示されていました。バカラのガラス食器や本など、当時の生活の一部も垣間見ることができます。

驚くべきは、各部屋ごとに異なる壁紙や照明などの細かなディテールです。部屋ごとにコンセプトがあり、客間や婦人用客間など、来客者に応じた部屋が多数並んでいました。

どの部屋でも快適に過ごせるように暖房機器が設置されており、今もその姿を留めています。当時の暮らしぶりのワンシーンが目に浮かぶ空間でした。
1907年に増築されたサンルーム

東側に位置するサンルームは1907年に増築されたものです。当時の岩崎家の家族写真が展示されており、家族の憩いの場であった様子が伺えました。

2階に上がると男性用の客間と婦人用の客間が完備されています。モダンでシックな落ち着いた雰囲気の男性用客間に対して、婦人用客間はピンクを基調とした異なる雰囲気でした。男性と女性それぞれの立場が明確だった当時の雰囲気が建築の細かなディテールにも反映されています。
庭園を一望できる2階のベランダ

2階のベランダにも出ることができ、上から庭園を一望することも可能です。ベランダと言っても奥行きも幅もある広々としたスペースで、日向ぼっこをしながらゆっくりと過ごせるほどの空間でした。

館内の壁紙に使用されているのは「唐草文様」と呼ばれる模様です。2階の部屋では実際に触れるものや種類豊富な柄が展示され、職人技が活きた作り方も開設されていました。

2階部分には当時のトイレも公開されています。入ることはできませんが、当時のトイレもさほど現在と変わりない印象で、日本の上下水道の発達も感じられました。
現在の5千円札の顔でもある津田梅子さん

旧岩崎邸は現在の5千円札の顔でもある津田梅子さんのゆかりのある場所としても知られています。当時、津田梅子さんは岩崎家の子どもの家庭教師として足を運んでいたこともあり、当時の様子を紹介するパネル展示も設置されていました。

洋館の入口から少し進んだ先には、お客様用の玄関とは異なり、使用人や家族が一般的に使用していた使用口もありました。実際の生活ぶりを想起させる空間です。

洋館と和館は繋がっており、洋館と和館が併設された絶妙なバランスは世界的にもきわめて珍しい建築物とされています。
和館は書院造を基調として建設

和館は書院造を基調としており、建てられた当時は洋館を遥かに超える大きさだったとされています。現在では冠婚葬祭に使われていた大広間のみが現存しています。

ふすまや床の間には障壁画が残っており、現在では入手困難な部材が数多く使用されています。
日光を取り入れるためにつけた高い位置の障子

暗くなりがちな日本家屋ですが日光を取り入れられるように、高い位置にも障子を設置するなど工夫が施されていました。

和館ではお土産にぴったりなお菓子や小物も販売されています。訪れた記念やお土産に買っていくのもおすすめです。
抹茶や上生菓子が味わえるお茶席体験も

伺った日は工事中だったため、足を運べませんでしたが、通常では抹茶や上生菓子が味わえるお茶席体験もできます。歴史ある空間でゆったりと日本のお茶の時間を満喫してみてはいかがでしょうか。

かつて20棟以上の建物が並んでいましたが、現在は芝生が植えられています。庭園部分には目を惹く大きな石灯篭をはじめ、春には桜、秋にはモミジなど春夏秋冬の花々を愛でられるのも魅力です。季節ごとに足を運び、移ろいゆく季節の庭園を満喫するのもおすすめです。
スイスの山小屋風の木造建築が特徴の撞球室

洋館から地下通路で繋がっている撞球室は、洋館と同様にジョサイア・コンドルが設計しました。当時の日本では非常に珍しいスイスの山小屋風の木造建築が特徴です。

全体が木造建築となっており、アメリカの木造ゴシックの流れを組むデザインが特徴です。金唐革紙の壁紙が使用されており、窓枠や梁など作り込まれた内観が目を惹きます。

今回は明治に建てられた、国の重要文化財に指定される建築物「旧岩崎邸庭園」をご紹介しました。歴史を刻んでも魅せられる繊細なデザインや建築様式はもちろん、生活していた様子を感じ取ることができました。上野恩賜公園からも程近く、散策コースにぴったりなので、ぜひ旧岩崎邸庭園に足を運んでみてはいかがでしょうか。
詳細情報
〈スポット情報〉
店名:旧岩崎庭園
住所:東京都台東区池之端1丁目3-45
営業時間:9:00〜17:00(入園は16:30まで)
閉館日:年末年始(12月29日~翌年1月1日まで)
入園料:
一般 400円 65歳以上 200円
【20名以上の団体】
一般 320円 65歳以上 160円
【年間パスポート】
一般 1,600円 65歳以上 800円
【都立9庭園共通年間パスポート】
一般 4,000円 65歳以上 2,000円